ディープテック 世界の未来を切り拓く「眠れる技術」

この本ではAI、ビッグデータ、IoT、ロボティクスといったITに関するテクノロジーだけでなく、農業や食料、環境やバイオといった様々な分野のテクノロジーを取り扱い、同時に日本がこれから向かうべき方向の提案をするような内容になっています。

ディープテックとは?Hello tomorrowというパリで設立されたNPOが定義しているディープテックはここに記載されています。 hello-tomorrow.org

What is deep tech? Unlike existing digital platforms and apps, future “deep” technologies will advance the technological frontier. Deep-tech innovations are disruptive solutions built around unique, protected or hard-to-reproduce technological or scientific advances.

Deep tech innovations lie at the crossroads of massive shifts in demand led by megatrends (such as global climate change, demographic shifts, resource scarcity, and an aging population) and scientific progress (such as the discovery of the CRISPR-Cas microbial adaptive immune system) and are impacting all industries.

そして、この本では少し解釈を変更し、日本の技術や企業がディープイシューの解決に貢献できるチャンスを持っていることを示唆する内容になっています。

Hello Tommorowは、「斬新かつ既存技術よりも大幅に進歩したもの」であり、「下支えする知財は複製が困難もしくは入念に保護されたもの」であり、さらには「既存の産業を破壊し新たな市場を作りうるもの」だと捉えている。

しかし、「ディープテックによってディープイシューを解決する意義やアイデアや事例」を紹介していく本書では、この3点はディープテックの意義に入らない。既存技術、つまりは古ぼけて痛い眠っていたりする技術でも大いに役立つケースがたくさんある。知財のみならず、情熱やストーリー性や知識の組み合わせといった観点からも参入障壁が高く、既存の産業を破壊せず、むしろ活気づけるものだと考えているからだ。




www.fermenstation.jp

日本のディープテック紹介事例で印象に残っているものは、ファーメンステーションですね。米から米エタノールを製造する技術を持つ会社で、そのエタノール自体に付加価値があることに加えて、製造段階で出る副産物(バイプロダクトと呼ぶ)や未使用資源を活用した商品から石鹸や鶏の飼料を製造しています。これがこれからの企業に求められる「無駄を出さず、サスティナブル・持続可能」な企業活動をするといった思想を実現している事例だと思います。

加えて発酵タンクは小型のものを開発し、地域に1つもしくは農家1軒ずつ発酵タンクを提供し、中央集権化も実現しているといったところがディープテックの事例であると言えるところです。

ここでなぜ中央集権化が必要かといった話ですが、これからはアジアの人口がより増加し、中でもこの本では東南アジアが重要なマーケットとなることを示唆しています。東南アジアの国には、アメリカのような広大な大陸ではなく、険しい山々や多数の島から構成された国も多く、中央集権化するための物理インフラを整える方がかえってコストが高くなるケースが多く存在します。そういった背景からも、中央集権化が非常に重要になってきます。


miraimedia.asahi.com


【外務省×SDGs】どれから始める?未来のために

国連のリーダーズサミットで決められたSDGs(世界を変えるために2030年までに達成すべき17の目標「持続可能な開発目標」)を達成するためにも重要になってくるディープテックはまだまだあるはず。

格差社会や資源枯渇(今のライフスタイルを維持すると2030年には地球が2つ必要になると考えられている)といった問題は、新しく開発された技術のみならず、過去に実現された技術を新たな視点で応用し、循環型経済の形で企業活動を再構成することができれば、誰もが幸せを感じられる世界を作ることができるのではないでしょうか?

そういった世界をイメージするためのヒントがこの本にはたくさんありました。

読むのにそこまで時間はかからないので、是非いろんな人に読んでみてもらいたい1冊です。