After GAFA 分散化する世界の未来地図

何気なくタイトルで手に取った「After GAFA 分散化する世界の未来地図」ですが、これもまたエンジニアにもオススメできる面白い本でした。

書評なども読まずにとりあえず読み始めたところ、GAFAのダークサイドというか問題点について事実をもとにわかりやすく説明されており、すぐに引き込まれました。 そして、プラットフォーマーが資本主義社会の恩恵を受け巨大化しさらに中央集権化して富を独占している中で、ブロックチェーン技術が新たなレイヤーで分散化を促しインターネットと同様の発展を遂げる可能性を感じさせる内容でした。

ブロックチェーン技術は仮想通貨に使われている技術というのが一般的な見方だったと思いますが、ここ最近は他の分野でも応用事例がかなり検討されており、それらの事例をAfter GAFAのビジネスモデルとして紹介しているところは非常に興味深い内容です。エンジニアがこの本を読めば、ブロックチェーンが今後重要な技術要素になることがすぐに理解できると思います。


ただし、ブロックチェーンの技術を理解すればエンジニアとして優位なポジションに付けるかというと、現時点ではそれだけではちょっと難しいかもしれません。ブロックチェーンを使ったシステムは普通のプログラミング言語やコンテナ環境で実装できるので、それだけだとイマイチ何に使ってよいかわからないと思います。このブロックチェーンをどのように実世界のビジネスで活用するかというところまで考えられるエンジニアが今は必要であり、加えて、現在求められているのはこの技術を使って中央集権化されたプラットフォーマーとは異なるレイヤーでビジネスを発展させることができるということだと思います。 このビジネスが軌道に乗るころにはブロックチェーンがわかるエンジニアは引っ張りだこになりそうです。ここ最近ではデータサイエンティストなどデータにかかわる人が引っ張りだこになっていたように。


この本のサブタイトルは「分散化する世界の未来地図」ということで、ブロックチェーンという技術をもとにするビジネス以外にも、お金や国家のあり方などを考えさせられる部分もあります。 個人データの収集による信用スコアリングや行動データの活用によるプラットフォーマーや国家による監視資本主義について書かれており、現在の資本主義社会が抱える経済格差、環境破壊、失業など課題が、資本主義の考えとテクノロジーの発展がより課題を大きくし、転換が必要な時期が来ているといことを改めて認識しました。

そして、このような課題を解決するために、哲学からテクノロジーを見直す機運が高まっていることも書かれており、エンジニアとしてテクノロジーを学ぶ以外に哲学・倫理といったことも考える必要があるという点も改めて認識できると思います。

この本は1回だけ読んでそのまま内容を忘れてしまうというより、手元に持っておいて、何度か読み直したいと思える本ですね。

ちなみに小林さんのインタビューがこちらにもありましたので貼っておきます。


「After GAFA」と「After COVID-19」、新型コロナウイルスという脅威は分散化を加速させるか? (インフォバーンCVO 小林弘人氏) #あたらしい経済