大前研一 AI&フィンテック大全 「BBT×プレジデント」エグゼクティブセミナー選書

何がきっかけで読むことになったか忘れてしまいましたが、期待していた通りの内容でいろいろと勉強になりました。

大前研一さんがすべて書いた本かと思ったら、そうではなくてAI&フィンテックの章それぞれの1コマを大前研一が書き、残りはその分野の経営者や大企業でその分野をリードしている方々の知見を共有するといったスタイルの本でした。

パート1、AIの部分で中国企業が発展している理由について少し書かれてあるのですが、

私の知人が経験する中国のシステム・インテグレーション会社は、なんと全国民の半分の健康保険データを持っている。民間企業がそんなことをすれば、日本の場合、社会問題になるが、中国ではお咎めはいっさいない。

とのこと。これは2017年に話された内容のようなので今現在は少しずつ規制が入っていると想定されますが、それでもやはり規制の厳しさでテクノロジーの発展が大きく左右されることが改めてわかります。


パート2、フィンテックについても日本のスマートフォン決済の普及が遅い理由について

全国銀行協会が「CAT (Credit Authorization Terminal」という信用照会端末を使ってクレジットカード加盟店を一括して管理するなど、中央集権色が強いためだ」

と書かれています。これについては海外のテクノロジー企業が乗り込んで来るのを防いでいるというメリットがまだあるようですが、

たとえば、アリババが日本の地銀を一行買収する。あるいは、「余額宝(ユアバオ)」のようにMMFで実質的な銀行業務を行い、それをベースに「アリペイ」を展開する。そうすると彼らは少なくとも年四%の運用益を出すので、0.1%しか利息の付かない日本の金融機関の預金が雪崩を打ってそこに流れていくのは、火を見るより明らかだ」

と書かれています。実際、一般の人はネット銀行以外の銀行を使うメリットはかなり減ってきていると思いますので、まずは地銀の再編から始まり、どんどん銀行業務もアンバンドリングされていくことが容易に想像できると思います。

こういったことが2018年にすでに議論されており、これが書籍化されただけなのですが、2021年はどのような議論がされているのでしょうか。

エンジニアとしては、日ごろの業務・テクノジーに付いて行くだけではなく、世の中を大局的に見ておかないと知らない間に時代遅れの技術のみを扱うレガシー人材になりかねませんね。